一般に、軍人、警官、スワットチームのメンバーはタフだと思われている。

ルーク・ジャンセンは、これまで軍警察やスワットチームで働いてきたので、アフガンの戦闘でストレスが彼の心を蝕み始めたとき、それを恥ずべきことだと感じ、死を望むまでに自らを追い詰めた。

 

彼は、最近、アイオワ州フェアフィールドにあるマハリシ経営大学で行われたPTSD(心的外傷後ストレス症候群)に関する会議で、この行き場を失った自分自身の体験を語った。

※この記事は、Ottumwa Courier に掲載された記事(2012.07.30)の抄訳です。

アフガニスタンの医療テントは、戦闘で負傷した兵士達のためのものだったと彼は感じた。

だから、その医療テントに入り、医師に悲しくてたまらないと話すことは、彼にはどうしてもできなかった。

 

彼らが到着した最初の夜、基地が攻撃された。

銃声、爆発音、燃え広がる炎が、絶え間なく続き、そこで目にしたものは、彼が扱うことのできる許容範囲を超えていた。

眠ることができず、パニック発作を起こし、自分自身に対する不安を抱えながら、彼は自分の部下を指揮しなければならなかった。

 

「自分はタフだと思っていた」と彼は語る。

しかし、戦闘区域では、彼が体験する世界は、全くコントロール不可能だった。

 

ある日、アフガニスタン人の小さな女の子が、米軍の運搬車にひかれて死亡した。

その事故の調査のために現場に派遣された彼は、道ばたに子供の死体があるのを見つけた。

怒った家族がその子の遺体を求めてやってきたが、ジャンセンは軍の犯罪調査部門から、調査が終わるまで誰も事故現場に立ち入らないようにと指示を受けていた。

しかし、それを通訳してくれる人はいない。

地元民の怒りはどんどん増していき、多くの人々が集まってきたが、このアメリカ兵士がなぜ子供の遺体を家族から引き離そうとしているのか理解できなかった。

 

そのとき、一人の男が走り寄って、近くにいた米軍の兵士を殺した。

彼の神経は極限を超えて耐えきれなくなり、拳銃を自分自身にあてて自殺しようとした。

医療関係者達は、彼の自殺未遂について聞き、彼は戦場から避難させられた。

そのときジャンセンは、任務を果たすことができず、自責の念にかられた。


戦場から帰ってきても彼は苦しみ続けるしかなかった。

 

少なくとも、彼は生き延びることはできたが、アメリカに戻ってきても、自殺することばかり考えていた。

彼は眠ることができず、パニック発作に苦しみ、深い恥辱を感じていた。

特に基地で治療を受けているとき、負傷を受けた他の兵士達を見て、心の病に苦しんでいる自分が恥ずかしいと感じた。

 

マハリシ経営大学の「脳、意識、認知センター」のディレクターであり、心理学者であるフレッド・トラヴィス博士は、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)は体の傷と同じように、現実に脳に傷を生み出していると話している。

PTSDを患っている患者のCATスキャンがそれを示している。

PTSDに苦しんでいる人の脳は、一般の人の脳とは明らかに違い、PTSDの影響は生理的なものだという。

 

しかし、ジャンセンは、彼の脳が短絡的になっていたことを知らなかった。

彼はアイオワに戻って警察署で働き、鬱と不安の治療を受けていたが、それでもまだ死にたがっていた。

警察署の上司は、彼が自殺の恐れのあることを聞き、彼を解雇する手続きを始めていた。

 

「ジェリー・イエーリンが、私の命を救ってくれた」とジャンセンは語った。

イエリンは、第二次世界大戦での戦闘機のパイロットで、30年間も診断未確定のPTSDを患っていたが、超越瞑想を行うようになってから、心の平安を取り戻すことができた。

彼はジャンセンの話を聞いて、彼に電話をし、そしてジャンセンと彼の妻が、デヴィッド・リンチ財団から奨学金を得て、超越瞑想を学べるように手配した。

 

ジャンセンは、それは試してみる価値があると思った──その頃、彼は妻と5才の娘の目の前で、自分の頭に拳銃をあてて、自殺しようとしていたからだ。

フェアフィールドへの旅は、価値あるものだったと彼は語っていた。

そこで彼は、心の静けさを見つける方法を学んだ。

それによって、彼は、長い間失っていた心の平安と寛ぎを、久しぶりに取り戻すことができたのだ。


超越瞑想を行うと長い間失っていた心の平安を取り戻すことができた。

 

その会議で、トラヴィス博士は、PTSDの患者の脳の中で何が起こっているかを次のように解説した。

 

戦闘地域では、心は極度に緊張した状態で、油断なく周りに気を配ってていなくてはならない。

兵士達は、あらゆる危険性を見いだして、そのときの音や風景を記憶の中に刻み込み、危険を避けようとする。

PTSDの症状では、そのときの状況に類似したすべての音や風景が、その人を生きるか死ぬかの状況に追い詰める。

危険だった状況の記憶が、彼の脳の中に閉じ込められているからだ。

さらに悪いことに、脳における「問題を見いだす部分」はオンのままスイッチが固定され、「問題を解決する部分」がオフになるように、心が設定されてしまうのだ。

その人が見るものすべては問題であり、その問題の解決策が見いだせないとき、絶望感だけが高まる。

 

しかし、超越瞑想を行うことで、障害を受けたこうした脳の部分が修復されるようだ。

瞑想中には、脳の前頭葉により多くの血液の流れが見られるが、脳のその部分は、管理を行う部分だとされている。

 

「瞑想によって、脳の前頭葉がより発達することがわかっています。

その結果、その人はストレスに満ちた状況をもっとうまく扱うことができるようになる」とトラヴィス博士は説明する。

つまり、瞑想すると、外側の世界で衝撃的な状況に直面しても、内側の心の平安を維持することができるということだ。

この事実に、復員軍人援護局と軍隊が今、注目し始めている。

 

復員軍人援護局は、PTSDに対するTM(超越瞑想)の効果を調べるために、デヴィッド・リンチ財団に二つの大きな研究を委託した。

TMは医療の代わりになるものではないが、心の病の改善を促す手段として医師達が推薦している。

今回の会議は、TMを必要とするすべての退役軍人に、奨学金を提供するきっかけになったとイエリンは語った。