自己実現を生きている人は、わずか人口の1%
どの程度まで人生で成功を得られるかは、どれほど自分自身でいられるかによって決まります。
このことは超越瞑想の効果と同じように客観的に測定することが可能です。
どれほど自分自身でいられるかは、「自己実現」という心理学的な指標を使って測定することができます。
米国の心理学者アブラハム・マズローは、私生活と仕事の両面で大きな成功を収めた人たちを調査し、この自己実現という指標を開発しました。
マズローは、成功した人々には共通することが一つあることを発見しています。
それは、彼らがどんな状況にあろうと自分自身を保つことができるということです。
マズローは、彼の作った自己実現の尺度の上位二つの区分に入るのは、人口の約1%の人たちだけだと推定しました。
これらの人々は、真に「自己実現」した人であると言えます。
自己実現を成長させる「至高体験」
マズローは、至高体験を得れば、より高い自己実現へと向かって成長することができる、と述べていました。
至高体験は、ある人たちにはときどき起こりますが、それを体験するための方法についてはマズローは何も示しませんでした。
マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは、超越の体験を得ることの重要性について説明し、その体験を得るためのシンプルなテクニックを提供してきました。
そこでわかったことは、マズローが説く至高体験は、超越の体験と非常によく似ている、ということです。
しかも、超越の体験が実際に自己実現を成長させる、ということが科学的研究によって明らかにされました。
このことから超越瞑想は、至高体験を得るための系統だったテクニックであると言えます。
自己実現に対する超越瞑想の効果:科学的研究
超越瞑想は他の手法と比べて3〜4倍効果的
American Psychologist 42: 879–881, 1987超越瞑想と他の瞑想法やリラクセーション法を比較してみると、自己実現に対するTM(超越瞑想)の効果は他の手法よりもはるかに優れていることがわかります。
ここに紹介する研究は、自己実現に対する様々な瞑想法の効果に関する全ての研究(全部で42件の研究、そのうち18件がTMの効果を調査したもの)をメタ分析したものです。
TM以外のテクニックでは、効果の平均値は非常に小さな値に留まりましたが、TMの効果の平均値は、他のテクニックと比べて3倍から4倍という大きな値となりました。(効果=.08 p=.0002)Ref.
他にも、TMの自己実現に対する長期的な効果に関する興味深い研究があります。
この研究では、マハリシ経営大学の学生たちからなるTMのグループと、他の三つの優れた大学の学生たちからなる対照グループを10年間にわたって調査しました。
自己実現を生きている人は、通常人口の1%のみ。それが超越瞑想のグループでは38%
マズローの研究によると、自己実現尺度の上位二つのカテゴリーに入るのは人口の1%だけですが、TMのグループでは実験期間の最初にすでに6%の人がこのカテゴリーに入っていました。
これは、TMグループの学生たちのほとんどは、大学に入る前からTMを行っていたという事実によります。
その6%という数字が、10年後には38%まで伸びました。
このような結果が偶然に起こる確率は500万分の1 (p=.0000002)です。
一方、他の三つの大学の学生からなる対照グループでは、自己実現の有意な伸びは見られませんでした。
Ref.Journal of Social Behavior and Personality 17: 93–121, 2005
自己実現の尺度と超越瞑想の効果
ここで自己実現とは何かを、最も広く利用されているショストロームの「人格志向尺度(POI)」に従って、もう少し詳しく見てみましょう。
そして、その後で超越瞑想が「人格志向尺度」の個々の項目にどのような影響を生み出すのかを見てみます。
自己実現とは何かを理解すれば、自己実現を成し遂げた人がどうして成功するチャンスに恵まれるのかがよく理解できます。
「人格志向尺度」には12の項目がありますが、これは次のような3つのグループに分けられます。
1.強い自己アイデンティティ(自信)
・内的志向性(ID)──ある人の注意が内面に向いている場合は、その人の信条や自発性が人生における決定や行動を引きおこす推進力となります。
反対に、ある人の注意が外側に向いている場合には、その人の決定や行動の大部分は外側の環境や周りの人たちによって左右されることになります。
このような人たちは、他人の意見について敏感になりすぎたり、悩んだりすることがあります。
・時間志向性(TC) ──どの程度まで過去や未来ではなく、現在を生きられるかという尺度。
自己実現した人は、高い時間志向性を持っていますから、過去の出来事に不必要に捕われたり、自分の未来を夢想したりすることなく、現在の体験に集中することができます。
自己実現した人は、過去の出来事に対して罪悪感を感じたり、後悔することはあまりありません。
また、自己実現した人の未来は、たいてい現在の目標と結びついています。
・自己受容(SA)──どの程度まで自分の欠点を認めて、自分を受け入れられるかという尺度
・実存性(Ex)──どの程度まで起こっている状況に対して、原則に捕われずに柔軟に対処できるかという尺度
これらの尺度は、その人が内側に安定した基準を持っており、「今、この場所」に注意を向けて内部および外部の環境に上手く反応できることを示しています。
2.情緒面の成熟度
・感受性(FR)──どの程度まで自分の感情や必要性と調和しているかという尺度
・自発性(S)──どの程度まで自然に行動して自分自身でいられるかという尺度
・親密な人間関係の形成能力(C)──どの程度まで期待や義務に抑制されずに他人と親密な関係を形成できるかという尺度
・攻撃性の受容(A)──どの程度まで自分自身の攻撃性を自然なものとして受容できるかという尺度
これらの尺度はどれも、人が自分の感情に正直でありながらも、他人と温かい人間関係を形成することができ、感情表現が内側の安定した基準によって導かれていることを示しています。
3.自己と世界に対する統合された展望
・自己実現価値(SAV)──自己実現した人に典型的な価値(自立性、独立、自己充足性)の評価。
・自尊心(SR)──自己の価値と才能の評価
・人間の本性に対する建設的な見方(Na)──どの程度まで人間の本性は善であるという建設的な見方ができるかという尺度
・シナジー(Sy) ──どの程度まで矛盾を統合できるかという尺度
これらの尺度は、その人が自分や周りの世界に対して肯定的な考えを持っていることを示しています。
このような人は、自分や他人の中に善良な性質を認めるなど、より高い価値を大切にします。
また、このような人は、自分自身と周りの世界との関係に十分満足しています。
下のグラフは、超越瞑想がこれら全ての要素にどのように影響を及ぼすかを示しています。
点数はパーセンタイルで表されています。パーセンタイルの点数は、人口のどのぐらいの割合の人たちがTM実践者のレベルよりも下にいるかを示しています。
もし、ある人が70%の点数だとすると、70%の人たちがその人以下であり、30%の人たちがその人以上であるということを示しています。
これらの点数は、全体で563人の被験者を対象とした超越瞑想に関する18件の調査の平均点です。
平均的な調査期間は3〜6カ月であり、自己実現と関係した全項目の平均点は53%から73%へと20%上昇しました(グラフをクリックすると拡大できます)。
これまでの研究から、自己実現の度合いは青年期を過ぎるとほとんど伸びないことがわかっているので(今回の調査の被験者はほとんどが18歳以上でした)、これは非常に珍しい結果であると言えます。
また、この18件の調査のメタ分析によって、長く超越瞑想を続けている人ほど効果が大きいことが分かりました。