『α波がリラックスに最適』を覆す瞑想(マインドフルネス)の脳科学 の記事への反論

脳の疲れの原因は“デフォルト・モード・ネットワーク”の記事でいうところの「基底状態」とTMでいうところの「意識の基底状態」とは異なりますので、脳波の同期という観点から当ブログに書かせていただこうと思います。

脳に関する国内最大級の総合情報サイト脳科学メディア 2018/11/11の記事に脳の疲れの原因は“デフォルト・モード・ネットワーク”『α波がリラックスに最適』を覆す瞑想(マインドフルネス)の脳科学 の記事に下記の記述があります。


「デフォルト・モード・ネットワーク」とは、活動的な思考を行わないときに無意識に脳が行う脳内ネットワークの活動をいう。従来、ヒトの脳は「話をする」「走る」などの意識的な活動を行うときにのみ活発になり、それ以外の場合には休んでいると考えられてきた。しかし、ワシントン大学医学部のマーカス・レイクル博士の研究によると、意識的な活動を行っていないとき、脳は従来の説とは異なる活動をしていることが明らかとなった。これまで、意識的な活動をしていないときには「基底状態」というほとんどエネルギーを消費しない状態と考えられていたが、最新の研究では意識的な活動時に使用されているエネルギーの20倍を消費していることが分かった。

成人が1日に使うエネルギー量は、約2,000Kcalである。骨格に368kcal、肝臓に361Kcal、脳に337Kcalである。そして、脳が使うエネルギーの337Kcalのうち、「話をする」「走る」などの意識的な活動に使われるエネルギー量は5%(17~18Kcal)程度といわれている。20%(66~67Kcal)は脳細胞の維持、修復に使われており、残りの75%(252~253Kcal)は意識的な活動をしていないときに消費されている可能性をレイクル博士は指摘している。
fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像法(血流動態反応を視覚化する技術))の結果から、脳が意識して行動しているときの血流量をみると後部帯状回と前頭葉内側で血流が減って活動を低下させているが、意識的な活動をしていないときは血流量が増加して後部帯状回と前頭葉内側の領域が脳内で最もエネルギー量を消費していることが分かっている。このときの脳活動が、「デフォルト・モード・ネットワーク」である。

デフォルト・モード・ネットワーク、自動車に例えられる。自動車は信号待ちなどで停止している場合でも、いつでも再発進できるようにエンジンを低速回転でアイドリングさせている。脳でいえば、ひとつの作業に集中している場合には脳の作業領域のひとつにのみエネルギーを費やすことで対応できるが、次に何が起きるか分からない場合には脳の作業領域の複数にエネルギーを費やさなければならないため、意識的な活動を行っていない場合ほど多くのエネルギーが必要であるという考えである。(出典:社団法人認知症高齢者研究所


TM実習中、体は深い休息と意識の明敏さを同時に保つ

下図は、TM実習中の脳の21地点からのEEGを計測し、脳各部が80%以上同期(離れた場所からの脳波が調和し波がそろって上下)した場合、実線でつながれるように表示してあります。

薄い細い線は80%、それ以降同期度が増すにつれ実線が太くはっきり表示され、さらに同期度が高まるにつれ赤茶色に表示されるようにコンピューターで処理されています。フレッド・トラビス博士

下図はTM実習中の超越意識状態(サマーディ)の状態を示します。

赤枠の中に示されているのは1秒間に8~10ヘルツの脳波(α1)周波数帯の脳波の同期が超越意識を特徴づけます。

脳の司令塔ともいえる前頭部は脳の他のあらゆる部分と同期して明敏かつ、効率的でエネルギの消費が最小な状態で機能しています。

α1とθ2の周波数帯が優位ですので、意識は安らいでいながら明敏に目覚めています。

よって、通常言われるデフォルト・モード・ネットワークのぼんやりしている状態とは異なります。

TM実習中には「安らぎの機敏さ」と表現される状態となります。

上図で赤く示されている部分は血流が高く、意識は明敏に目覚めています。

青色で示されている部分は後部帯状回を含め血流が低く、深い休息を示しています。

TM実習中は、意識を呼吸その他に向けて、意識的に瞑想することはしません。

TM中は一般的にデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる状態とは異なる

マインドフルネスにより、脳が意識して行動しているときの血流量は前頭葉内側で減りますので、TMとは逆になります。

TM中は前頭葉への血流が増加し、意識が明敏に目覚めています。

かつ後部帯状回および脳幹部、小脳部で血流が低くなり、エネルギーを消費しておりません。

よって、「なにもしないでぼんやりしている」種類のアイドリング状態とは異なり、

TM瞑想中はまさに自動車のアイドリング時と同じようにエネルギーの消費が一番少ない状態で瞑想をしていることが、呼吸量の低下のデータからも分かります。

【結論】

超越瞑想TMでは、マインドフルネスで言うとことの、何もしないでいるときにエネルギーの消費が80%になるという

デフォルトモードネットワークの状態とは異なります。

『安らぎの機敏さ』という言葉で特徴づけられる他に類を見ないユニークな瞑想です。


ということで、私の好きなYouTube動画のラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番を一緒に楽しんでみませんか。

指揮者、ピアニスト、すべての楽器奏者が、いずれも自己を過剰に前面に出すことなく、お互いに信頼しあい、難曲を静寂と秩序のうちに演奏していきます。

TM瞑想中の脳内の秩序を表現してるように思えるからです。

 

 

参考文献

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