デフォルト・モードというからには、パソコンで言えばソフトをたくさん入れて負荷をかけて使い始める前の初期状態

クルマに例えるならば、アクセルを踏み込んでエンジンをふかしスピードを上げる前のアイドリング状態のように、エネルギーの消費は最少なはずなのに、

一般にデフォルトモードネットワークと言われる脳の状態は、何もしないでぼーっとしているときに、脳のエネルギーの80%も消費されてしまう状態と言われるのは、なぜかと考えてみたいと思います。

研究者が通常の意識状態の人間の脳の働きのみを調べ、意識の最小励起状態ともいえる超越・純粋意識(サマーディの体験)の科学的知見に明るくないことを加味した場合、デフォルトモードネットワークの説明はとてもよく理解できます。

そこで、基本に立ち戻ってみたいと思います。

ヴェーダ文献こそ意識の研究の権威とすべき

ヴェーダとヴェーダ文献の40部門のうち、「ヨーガ」から見ていきましょう。

パタンジャリのヨーガスートラ第1章、第2節に「ヨーガとは心の活動が完全に停止した状態である」と書かれています。

「ヨーガとは心の作用を止滅することである。」と記載される場合が多いですが、心の作用が止まった状態である のほうが正しい理解だと思います。

この状態を、本来のデフォルトモードな心とすべきではないでしょうか?


脳の血流で見ると、TM中、眠り、夢、目覚めの状態とは異なり、第4番目の意識状態である、超越意識状態では、前頭部の血流が約20%高くなり、意識が明敏であることがわかります。

同時に脳幹部と小脳では血流が減り、呼吸がきわめて静かな状態となり、体は深い休息を得ます。


意識を集中する瞑想法とTM瞑想の違い

下図のに示す通り、意識を集中する瞑想の場合、左右前頭部に強いガンマ波が認められます。(特に左前頭部に強く表れる。チベット瞑想にみられる傾向です)

右側のTMテクニックの場合、の全体にアルファ1(8~10ヘルツ)の波が同期(1秒に10個の波がそろって上下)し、

血流も前頭部後頭部に増すため、意識は明敏でありながら、体は深い休息を得ています。

長期実習者の瞑想中の呼吸停止のデータ

TMの長期実習者の場合、瞑想実習中、断続的にほぼ呼吸の停止する時間があらわれます。細胞が必要とする酸素が減少することにより体は深い休息を得、自然にほぼ呼吸が止まるほどに静かになります。このとき二酸化酸素の排出量も減少していることから、無理に呼吸をコントロールした結果ではないことが分かります。

超越意識を体験中、呼吸は20秒から40秒間 ほぼ止まるほどに少なくなり、超越意識が途切れると、呼吸の再開がみられますが、被験者はそのとき手に持っているボタンを押すように指示されています。▼の印が、ボタンを押した瞬間です。通常安静時人間は1分間に16回から18回呼吸をしますが、TM実習中は急激な過呼吸は起こらず、ゆっくりした呼吸が続いていることがわかります。

参考文献

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