「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN:Default Mode Network)という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

私も某京都市内にある大学の脳研究者を訪ね、超越瞑想TMの話をさせていただいた時、

「ああ、それはデフォルト・モード・ネットワークの状態のことですね」と言われて、しばし納得したのですが、

DMNはTMの観点からすると正しく認識されていない点もあるように思われますので、すこし書かせていただきたいと思います。

 

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)はここ10年ほどの間に有名になってきた言葉で、脳科学者の間では急速に知られるようになりました。

しかしマハリシ国際大学(MIU)では、高次意識に関する脳波の研究は1970年代初期から始まっており、多くの論文が発表されてきました。

1970年当時、脳波の研究と言えば、医学界で癲癇等の病気の発見方法としての脳波研究が主で、高次意識に関する研究はほとんどされていない時代でした。

 

米国アイオワ州にあるMaharishi International University (マハリシ国際大学:2020年2月上旬、正式名はマハリシ経営大学、通称はMIUの名に戻りました)

マハリシ国際大学では、その後もfMRIその他総合的な観点から高次意識に関する研究が続けられています。

 

マハリシヴェーダサイエンス学科長、マハリシ・ヴェーダサイエンス教授、 脳、意識、認知センター所長

2013年1月にニューヨーク科学アカデミーの主催で「瞑想研究の進歩」と銘打った画期的な会議が開かれました。

全米から瞑想について研究している研究者が集まり、マインドフルネス、禅、座禅、気功、そして超越瞑想に至るまで、

多種多様な瞑想の伝統に関する新しい研究結果が発表され、その時の座長を務めたのがフレッド・トラヴィス博士です。

博士は超越瞑想が脳機能に及ぼす影響の調査を専門とする著名な脳科学研究者であり、

アイオワ州フェアフィールドのマハリシ経営大学(MUM)で脳・意識・認知センターの所長を務められています。

研究者により、脳波の分類はかなり異なるのですが、世界的な潮流としては、下記のように脳波を分類するようで、私はトラビス博士の分類を支持しています。

シータ波を1と2に分け、アルファ波も1と2に分類します。

 

瞑想中集中するとエネルギーをたくさん使ってしまう。

下図は、左前頭部一か所(赤丸で示したF3)からの脳波を取り出し出力を示しています。

最初の図はTMを集中して実習していた被験者の脳波図です。

毎日 般若心経を声に出して唱える習慣のあるとても信仰心に篤い方です。

ご高齢で、瞑想歴は長いのですが、いつのころからかTM中、お念仏と同じようにTMのマントラを心の中で唱えるように強く思いながらの実習に変わってしまっていました。

シータ(θ)2からアルファ(α)1にかけて大きく波が示されていることから、ご本人はとても気持ちよく瞑想していることがうかがわれます。

ところが同時にベータ(β)波からガンマ(γ)波にかけて、波が大きくうねるように高まっており、とてもたくさんのエネルギーを使っていることがわかります。

これは正しいTMの実習方法ではありませんので、ご本人に伝え、すぐ修正することができました。

二番目の図は、TMを始めて数か月のとても有能な看護師の方の脳波図です。

私が脳波を測らせていただいた被験者の中で、脳波のパワーレベルが高い方の波形です。アルファ(α)波とシータ(θ)波ともに強く示されており、とても素晴らしい瞑想をなさっていらっしゃいます。

ベータ(β)波はほんの少し波立って見えますが、瞑想歴が長くなるにつれ、凪いだ海のように静まっていくと思われます。

脳波は指紋と同じように、一人一人個性があるのですが、下図の被験者は長期TM実践者で、ベータ(β)波からガンマ(γ)波にかけ、凪いだ海面のように静かで、とても静寂の深い瞑想であることがわかります。

このような方でも、雑念はあるのですが、ほとんどエネルギーを取られずに想念がおこっているため、エネルギー消費が少なく、このように示されます。

参考文献

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