新型コロナウィルスの影響で学校給食がなくなり、だぶついた牛乳を無駄にしないために、「蘇」づくりがブームになっていますね。
とても良いことだと思います。
「涅槃経」には「蘇」の作り方が次のように記載されています。
譬えば牛従り乳を出し、乳従り酪を出し、酪従り生蘇を出し、熟蘇従り醍醐を出す、醍醐は最上なり。
若し服すること有る者は、衆病皆除こる。所有の諸の薬は、悉く其の中に入るが如し。
いわゆる「醍醐味」ですね。「蘇」のあとに出来る最上の食品(薬)です。
しかし、醍醐の作り方はおろか、蘇の作り方も、文献をもとに試行錯誤しているので、正確には分からないのです。
我が家では、手作りのギー(澄ましバター)を常備していますが、
私は大学で畜産専攻でしたので、アーユル・ヴェーダのテキストに記されている「正しく作ったギーは100年持つ」の記述の、正しく作ったギーとは
一体どのような作り方なのかが、とても気になっていました。
自作のギーは丁寧に作っても、1時間強で出来上がりますし、不飽和脂肪酸とはいえ、100年も酸化しないとは考えられません。
しかし、その答えをインドで見つけたような気がしています。
それは、ちょうど一年前、インド・ケララ州でパンチャカルマを受けさせていただいた折り、処方された薬の一つに
「Ksheerabala101」という薬があったからです。
https://www.facebook.com/yuji.kawai.505/posts/2013239678761018
南インドのケララ州には、1000年以上昔からの知識と共に、アーユル・ヴェーダの各種知識を大切に継承している医師(アシタ・バイディア)の家系が残っています。
アーユル・ヴェーダクリニックの選択基準の一つに、医師の技量はもちろん、どれだけ、正しく調製された新鮮な薬が常備されているか、がポイントになります。
一口に牛乳といっても、日本ではほとんどがホルスタイン種が中心で、ジャージ種が一部流通していますが、
アーユル・ヴェーダの知識には、牛の品種別に、どのドーシャ、つまり、ヴァータ、ピッタ、カパ、そしてすべてのドーシャのバランスを取るなどの知識が残されています。
「Ksheerabala101」の101という数字は、なんと驚くなかれ、ミルクを蒸気の熱でゆっくりゆっくり温めながら、24時間、技術者が昼夜付きっきりで、
ミルクが四分の一の量になるまで煮詰めては、再度大鍋いっぱいまでミルクを足し、煮詰めては足すという作業を101回繰り返した回数を示しているのだそうです。
現代の最先端計測機器でその品質を調べても、50回煎じたものと100回煎じた薬の成分の違いは検出できないのだそうです。
それを愚直に、101回煮詰めるということは、この薬を作るのに4か月ほどかかっていることになります。
私は、どのミルクとハーブをどの段階でどのくらい加えるか等の知識はもちろん知らないのですが、気の遠くなるような緻密で根気のいる作業であることは想像できます。
一回でも焦がしてしまえば、最初から作り直しでしょうから。(-_-;)
これを醍醐味と言わずになんと言うことができるでしょう。
私と妻へのアーユル・ヴェーダの処方は、就寝時、百会のツボ(サハスラ・チャクラ)と手のひら、足の裏に塗り込むという指示でした。
もちろん舐めてもとてもおいしい味がします。
1年前のパンチャカルマ・トリートメントで、私の知性も、少しは正しく調整されたかもしれません (^_-)-☆
インド・アーユル・ヴェーダの知識の奥深さを知る一助になれば幸いです。