超越するというシンプルな体験には、体の自然治癒力を活性化し、脳の潜在力を開発するなど、多くの目覚ましい効果が見られます。これらすべての効果は、超越の体験特有のものです。
そのなかでも最も目覚ましく、最も議論の的になるのが超越瞑想の社会的な効果です。議論の的になると言うのは、もし、これらのTMの効果が本当ならば、人間の意識について長い間信じられていた仮説を考え直さなくてはならなくなるからです。結局のところ、これまでの研究が意味していることは、私たちは想念の源において互いに結びついており、その共通の源を通して互いに影響を及ぼし合っているということです。
世界で最も古い文献であるヴェーダの聖典には、少人数の人々が社会全体に調和を生み出すことができると記されています。少数の人々が自分の意識のなかで超越して統一を活性化し、それを「放射」するだけで、すべての否定性を中和できるというのです。
これまでは、僧侶たちが社会のなかでこの役割を担っていました。しかし、僧院においてさえも、超越するための体系的なテクニックが失われてしまいました。そのため、僧侶たちの祈りでさえ、昔ほど効果を生み出すことができなくなっています。
長い間超越するテクニックは失われてきましたが、それが今、再発見されたことで、古い文献に記されていた人間の成長に関する記述だけでなく、社会の発展に関する記述も確かめることができるようになりました。
それはどのようにして成されるのでしょうか?
海に飛び込むと、水の表面が活性化する
超越するのは、海に飛び込むのに似ています。水に飛び込むと、表面に大きな波が起こります。私たちは水の表面を活性化します。それと同じように、心がその源へと戻っていき、純粋な意識を体験するときには、意識の性質が活性化されます。その性質とは、統一、純粋な肯定性、互いに繋がっているという感覚です。超越瞑想中に測定されるすべての効果、特に 脳における効果は、こうした性質が活性化することによって生み出されます。
しかし、海に飛び込むときには、飛び込んだところに波ができるだけではありません。その波は海全体に広がっていきます。私たちが超越するときには、統一の性質が私たちの意識の内側だけでなく、周りの人たちの内側にも活性化します。その効果は私たち自身の内側に起こる効果ほど強くないかもしれませんが、しかし、そこには測定できる効果が確かにあるのです。
こうした効果に基づいて、1960年代にマハリシは大胆な予測を行いました。それは、ある都市または国家のわずか1%の人たちが規則的に超越することで、その社会のなかに測定できる効果が現れるという予測です。
それは電球のようです。小さな電球が部屋全体を明るく照らせるのはなぜでしょうか? それは、その小さな電球が電磁場を通して部屋全体と繋がっているからです。電球はただ電磁場を活性化して、光の波を生み出します。こうした光の波が電磁場全体に広がって、部屋全体を明るくするのです。電磁波は、いつもそこに存在しています。しかし、電球のスイッチを入れて電磁場を活性化しなければ、部屋は暗いままです。
電球が灯されていなければ部屋は暗いままです。それと同じように、もしその環境に肯定性が活性化されていなければ、心は肯定的にはなりません。
私たちの社会のなかでも、同じことがいえます。考えや感情といった私たちの主観的な世界の源には、ある一つの場が存在しています。現代物理学は、その場を統一場と呼んでいます。この場は常に存在していますが、私たちは「電球のスイッチ」を入れる方法を忘れてしまいました。つまり、超越することによって、この場を活性化する方法を忘れてしまったのです。そのために、私たちの社会は暗くなってしまいました。人々が自分の統一された本質を忘れてしまったために、犯罪、不正行為、事故など多くの否定的な行動が社会の表面に現れています。
しかし、一つの都市全体を明るくするために、至る所に電球をつける必要はありません。ところどころに電球をつけるだけで十分です。それと同じように、全員が超越しなくても、社会の1%の人たちが超越するだけで、すべての場所に超越の質を活性化することができます。私たちの心のなかに「電球」を灯すのは、超越して意識を活性化することです。意識の光が灯るとき、私たちはより人間らしくなります。意識の光が消えているときには、人は自分の利益のために他人を傷つけたとしても、自分が悪いとは考えません。しかし、意識の光が灯されると、自分が悪かったと思うようになります。犯罪を犯そうという考えがやって来なくなります。これは犯罪をなくすための非常に効果的な方法です。
都市人口の1%の人たちがTMを行うことで、社会全体に肯定的な傾向が現れるというマハリシの予測は、TMが人々の間に広く知られるようになった1970年代に実証されました。当時は、アメリカだけでも一年間に50万人の人がTMを習っていたので、人口の1%以上の人がTMをしている都市が数多く誕生しました。そこで、科学者たちはFBIに犯罪に関する統計を求めて、TM実践者が1%に達した12の都市(1%都市)と、それと同等な人口、地形、犯罪統計をもつ、12の都市の犯罪件数を比較しました。その結果、人口の1%の人がTMを学んでいる都市の犯罪件数は前年よりも平均8.8%減少しましたが、そうでない12の都市の犯罪件数は平均7.7%増加しました。1%都市とそうでない都市とを比較すると、相対的には16.5%の減少となります。これは統計的に有意な変化であり、そうした変化は偶然には起こりえないことが確認されています(p<.001) (p<.001)。また、科学者たちはこの変化の理由を探しましたが、TM実践者の数の増加以外には理由は見つかりませんでした。こうした結果は、その後も数件の調査によって確認されています。
さらに、1978年にマハリシは、TMテクニックを習った人たちが学べる、より上級の瞑想のテクニックを古いヴェーダの文献の中から復活させました。これらのテクニックは、「TMシディプログラム」と「ヨーガのフライング」と呼ばれています。特に、ヨーガのフライングは体と脳に特別な効果があることが分かっています。
TMを行っているときには、体の休息が深まるほど脳波の同調が高まることが観測されています。体が深く休息して、脈拍が遅くなるときには、脳全体が同調して働き始めます。ところが、ヨーガのフライングを行うときには、体がホップして活動的になり、それに伴って心拍数も増加するのですが、それにも関わらず、脳波の同調がTM中よりもさらに高まるのです(グラフのなかの「リフト」を見てください)。その結果、超越の状態と活動が統合され、すべてのTMの効果が強められます。
また、ヨーガのフライングは、私たちの社会にいっそう大きな影響を及ぼすことが分かりました。その影響は指数関数的に大きくなります。
物理学の法則によると、波の力はその振幅の2乗に比例して大きくなります。例えば、3人の人が湖の周りに立っていて、順番に池に飛び込むとします。すると、3つの波が生じて湖に広がっていき、やがて消えます。しかし、もし3人が手を取り合って同時に湖に飛び込めば、そのときに生じる波は一つの大きな波になります。その波の高さは3倍になり、しかも、その波が伝わっていく範囲は3の2乗の9倍になるのです。
ヨーガのフライングの場合にも、これと同じ現象が観測されています。ある都市で、人口の1%の人たちがそれぞれの家でTMテクニックを行うとしましょう。これは、湖に何人かの人が交代で飛び込んで波を作るのに似ています。1%の人たちがTMを行えば、その都市全体に効果を生み出すことができます。しかし、もし彼らが1カ所に集まってヨーガのフライングを行えば、これはみんなが手を取り合って一斉に湖に飛び込むのに似ています。そのときには、1%ではなく、ルート1%というより少ない数で都市全体に影響が行き渡るのです。
このことから、たいへん特別な仮説が立てられました。それは、少人数のグループであっても、人々が一緒にヨーガのフライングを行えば、その周りの何百万人もの人々の考えや行動に肯定的な影響を及ぼすことができるという仮説です。
この仮説の利点は、それが比較的容易に検査できることにあります。例えば、次のような実験をしてみれば、この仮説が正しいかどうか検証することができます。
1.科学者たちが、犯罪率の高い地域や戦争が起こっている地域など社会的なストレスが強い一つの地域を選ぶ。その地域では状況が悪くなっているので、誰も状況がすぐに改善するとは予想していない。
2.その地域にヨーガのフライヤーたちがやってくれば、すぐに状況がよくなる(戦争が終わる、犯罪が減少する、株式市場が改善する……)という予測を科学者たちが社会に発表する。科学者たちは、この実験が始まる日と終わる日を正確に設定する。また、科学者たちは、ヨーガのフライヤーたちがその地域を去った後には、すぐにまた状況が悪化することを予告する。科学者たちはその変化を測定する方法を前もって公表する。
3.ヨーガのフライヤーたちが設定された実験開始日に集まる。彼らはホテルのなかに留まっていて、外側の世界とはできるだけ接触しないようにする。そして、設定された実験終了日にその地域から出て行く。
4.科学者たちは実際に効果があったかどうか調査する。政府の統計や権威ある新聞に掲載された記事など、科学者たちから完全に独立した情報源からデータを集めて、それらを分析する。
50回以上の実験によって科学的に証明される
このような実験が1回や2回ではなく、50回以上も世界中で繰り返し行われてきました。そして毎回、その予測が的中しただけでなく、その地域の状況が劇的に改善しました。犯罪率や自動車事故率が減少したり、株式の取引が増大しました(それは投資家の楽観性の増大を示します)。
例えば、1981年から1983年にかけて、レバノンで7つの実験が連続して行われました。それは、レバノンで絶えず内戦が起こっていた時期にあたります。毎回、実験を始める前に、実験の期間中は紛争が静まると予告しました。そして、7回のどの実験でも、戦争の犠牲者の数が80%近く減少したことをデータは示しました。そのような大きな変化が7回も連続して偶然に起こる確率は、10,000,000,000,000,000,000回(1億×1億×100回)に1回以下の確率でした。
別の実験では、このテクニックの費用対効果がいかに大きいかを示しています。1998年3月に、イギリスのマージーサイド州のスケルマーズデイルという町で、少人数の瞑想者のグループがテレビ局に次のような予測を行いました。「これから150人のグループがヨーガのフライングを行います。その結果、100万人の人たちが住むマージーサイド州の犯罪が大幅に減少するでしょう」。しかし、この予測をまともに受け止めた人はほとんどいませんでした。なぜなら、それまでも多くの費用をかけて対策がなされてきましたが、犯罪は依然として増え続けていたからです。この予測がなされたときには、マージーサイドはイギリスで3番目に犯罪率が高い州でした。
従来よりも99%少ない予算で犯罪が60%減少! これは奇跡か?
しかし、実験が始まるとすぐに、それまで増え続けていた犯罪が減り始めました。そして5年後の1992年には、マージーサイドはイギリスで最も犯罪の少ない州になりました。犯罪率は以前と比べると40%の減少、イギリス全体の平均的傾向と比較すると60%以上の減少でした。わずか150人のヨーガのフライヤーたちのグループが、5年間にわたって225,000件の犯罪を防止し、州政府は全部で12億ポンド(約2000億円)の節約ができたのです。計算によると、ヨーガのフライヤーたちのおかげで、州政府は1時間あたり60万円の犯罪対策コスト(人的損害のコストは含まない)を節約できたことになります。
ヨーガのフライヤーたちは全員がボランティアでしたが、彼らの行った仕事に対して報酬(例えば気前よく1時間あたり3000円)を支払ったとしても、この方法は現在行われている方法よりもコストが99.5%も少なくて済みます。しかも、より大きな効果が期待できるのです。
犯罪の減少は、マージサイドに起こった多くの肯定的変化の一つにすぎません。その他にも、自動車事故が減少し、経済が改善し、公害が減少しました。
これまでに、社会科学の分野の権威ある研究雑誌に、このような調査が20件以上発表されてきました。研究雑誌の評判はそこに掲載される論文の内容によって決まりますから、権威ある研究雑誌には最高水準の論文しか掲載されません。これらの論文については、「TMとヨーガのフライングに関する論文」のページをご覧ください。
1980年代にヨーガのフライングの効果が科学的に実証されたので、マハリシは彼の世界的な運動にもう一つの目標を掲げました。それは、あらゆる国にできるだけ早く十分な数のヨーガのフライヤーのグループを作って、その国に肯定的な影響を生み出すことと、それに加えて、世界人口のルート1%のグループを作って全世界に影響を及ぼすことです。この目標の実現のために必要な費用は、TM運動の資金や支援者からの寄付で賄われています。ですから、超越瞑想の受講料を払う人は、全世界に肯定性を生み出すというこの目標のために直接的に貢献していることになります。
現在、TM運動の組織はインドの中心に9,000人(現在は余裕を見て2倍の18,000人)のヴェーダの専門家たちのグループを作ろうとしています。一つの大きな町を作るために、すでに800エーカーの土地が購入されています。現在、そこには2,500人のヴェーダの専門家たちが生活し、毎日肯定的な影響を生み出す活動に従事しています。彼らの生活費もまた、TM運動の資金や支援者からの寄付金によって賄われています。全世界のための大きなグループをインドに作ることにしたのは、インドの生活費が西洋よりもずっと安いからです。(平均1カ月25,000円)
それぞれの国にヨーガのフライヤーのグループを作る方法はいろいろあります。例えば、学校の子供たちが1日の授業の最初と最後にTMを行うという方法や、会社で従業員たちが仕事の一貫としてヨーガのフライングを行うという方法があります。また犯罪を予防するために警察官たちのグループを作るというプロジェクトでもいいしょう。刑務所で受刑者の社会復帰のためにヨーガのフライングを活用するという方法もあります。
受講料を払った人は、個人のレベルだけでなく社会のレベルにも、効果を生み出すことになります。
これらの方法は、過去40年間にわたってすでに行われてきました。そして、ヨーガのフライヤーを養成するために必要なコストは、ヨーガのフライヤーたちが自分の生活のなかに生み出す肯定的な効果によって、すぐに元がとれるということが分かっています。例えば、学校では、生徒たちの学習能力が高まり、学校全体のストレスが軽減するので、結果として、いじめや依存症やうつが減少し、教師たちの欠勤も大幅に少なくなります。会社では、従業員たちが就業時間の一部を瞑想の時間にあてることで、以前よりも生産性が向上します。刑務所では、TMはこれまで調査されたどの方法よりも効果的な社会復帰プログラムであるといえます。このように、このテクニックは個人のレベルで効果があるだけでなく、社会のレベルにも好ましい影響を生み出すのです。
このような理由から、デヴィッド・リンチ財団は、各国で最低でも一つの学校にTMを導入しようというプロジェクトを支援しています。なぜなら、一つの学校の生徒や教師たちが全員でヨーガのフライングを行えば、それだけでその国全体に肯定的な効果を生み出すことができるからです。例えば、日本では1,200人のヨーガのフライヤーがいれば、国家全体に肯定的な効果を生み出すことができます(1,200人というのは、日本の人口1億2千万人の1%の平方根です)。このように、一つの国に一つの学校だけでも十分なのです。
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