研究者によれば、超越瞑想を実践している正常高値血圧の黒人の若者は、血管の拡張機能が向上しているので、成人後に心血管系疾患になる危険性が減少するということです。

瞑想を8か月実践した後、これらの若者たちは血管拡張機能が21パーセント向上し、それに対して、瞑想していない同一条件の若者たちはその機能が4パーセント低下したと、ヴァーノン・A・バーンズ博士は語ります。

この研究を行ったバーンズ博士は、ジョージア医科大学に付属するジョージア予防研究所の生理学者です。

 

「私たちの血管は硬いパイプでありません。血管は身体の要求に応じて拡張したり収縮したりする必要があります。

このような拡張機能の改善が、心血管系疾患の患者にも再現できれば、心血管系疾患の予防および治療に瞑想プログラムが有効であることを証明することになります。

 

「この種の血管の変化は脂質低下薬で引き起こすことができますが、瞑想プログラムでそのような変化を起こせるのは注目に値することです」とバーンズ博士は語ります。

 

『アメリカン・ジャーナル・オブ・ハイパーテンション』の2004年4月号で、バーンズ博士とその共同研究者たちは、都市のスラム街に住む黒人の若者156人が超越瞑想を1日2回15分ずつ実践した結果、彼らの血圧は順調に低下していき、低下した状態で安定する傾向が見られたと報告しました。

この新しい研究は、バンクーバーで3月2日~5日に開催された米国心身医学協会の第63回年次科学会議で発表されました。

このとき、超越瞑想を実践している156人のうち57人を瞑想実践者のグループ、瞑想を実践していない54人を対照群として、比較研究が行われました。

ジョージア医科大学の研究者たちは、瞑想者の群では、内皮と呼ばれる血管内層の拡張機能の向上が見られることに気づきました。

「内皮の拡張の機能不全は、心臓病の初期に生じる症状で、そのプロセスは若年から始まります」とバーンズ博士は語ります。

 

研究者は、4か月目と8か月目に、右腕に巻いた血圧計バンドを2分間膨らませた前と後の上腕動脈(腕部に血液を送り込む主要な動脈)の直径をエコー検査法で測定しました。

4か月目にはどちらのグループにも、ストレス後の血管拡張機能に本質的な違いはありませんでした。

しかし8か月後、瞑想者にはEDADすなわち内皮依存動脈拡張の有意な改善が認められたとバーンズ博士は語り、生活習慣を変えるどのような試みもそうであるように、瞑想の効果が十分に現れるにはしばらくかかることを指摘しました。

 

「変化が一夜にして起こるということは期待できません。

瞑想も、運動や正しい食事といったその他の好ましい生活習慣も、歯磨きのように生活の一部にする必要があります」。

心臓病のリスクに対する瞑想の長期的影響を判断するには長期的な研究が必要である、と彼は語ります。

 

医師たちには周知のことですが、喫煙、高血圧、高コレステロール、心血管疾患は、すべてEDADの低下に結びつきます。

彼は、高い費用はかからず副作用もない瞑想について、「今日におけるわが国の心臓病の罹患率の高さを考えると、これは検討すべき事柄であると思います」と語りました。

 

米国で蔓延している肥満は、子供の血圧値を上げている大きな原因になっていると彼は語ります。

しかし、肥満は、貧困や家庭での安らぎの欠如などの日常生活のストレスが、過食、高脂肪食品のやけ食い、運動不足といった悪い習慣につながるという、不健康なサイクルのなかで起こっているようです。

 

また、ストレスがあると、睡眠が阻害され、その結果、身体ひいては血管の休息と回復が妨げられることになります。

瞑想をすれば1日2回15分ずつ、心が安定して精神活動が最小になるので、慌ただしい環境の中にいる人にとっては、リラックスして血管を緩めるために役立つようです。

 

ジョージア医科大学のジョージア予防研究所所長フランク・トレイバー博士と、同大学の心臓学者サレンダー・マルホートラ博士が、この研究の共著者です。

この研究は、会議に提出された論文摘要のうち、診察、診断、あるいは治療の観点から、治療法に変革をもたらす可能性が最も大きい研究の一つとして注目を浴びました。

この研究は、国立心肺血液研究所から資金提供を受けました。